記憶と認知

記憶の持続時間による分類

記憶には、様々なタイプがあります。最も単純な記憶のタイプ分けは記憶時間の長さによるものです。時間的な持続の違いから、短期記憶(short-term memory)と長期記憶(long-term memory)に分けます。短期記憶の例としてよくあげられるのは電話をかけるまでの数分間、電話番号を憶えているような場面です。電話がつながってしまえばその電話番号を憶えている必要はありません。短期記憶には留めておくことのできる情報の容量に限界があるという特徴があります。数字の系列を憶えるテストや、単語を憶えるテストでは、一度見たり聞いたりしただけで憶えることができるのは5~9個(平均7個)までです。また、数十秒以上憶えておく必要がある場合は、繰り返し口に出して言うなどのリハーサルが必要です。干渉に弱いというのも短期記憶の特徴です。電話をかける直前に別の数字を言われたりするとこれからかける番号を忘れてしまうこともあります。

あなたの記憶を試してみましょう

まず、白い紙を用意しましょう。最初は、下の文字を3秒見て、画面から目を離し、10秒後に覚えている文字を書いてみてください。 次の、下の文字を30秒間見て、画面から目を離し、1分後にその文字を、順番に書いて見てください。山、ガム、コーヒー、ホームページ、カレンダー、携帯電話、ボールペン、六本木ヒルズ、5円玉、涙

具体的な覚え方

さて、いくつまで書くことが出来ましたか?7つ以上の言葉を覚えるのは、とても難しいものです。さて、次に、次のようにして文字を憶えてみましょう。だから、コーヒーでも飲みながら気分を落ち着けて、そのホームページの山の写真を見て、カレンダーで山に登る日を決めました。そこで、携帯電話で山岳部の友達に連絡し、登山の日を決めました。ボールペンで、地図にルートを書いて、六本木ヒルズのオフィスにFAXしようとコンビニに行くと、何と1枚5円・・・でも5円玉が無い(涙)如何ですか?このように、ストーリーを考えて覚えると、覚えられることがあります。どうしてなのでしょう? それを解く鍵は、認知心理学の中で述べられています。では、認知心理学の世界を紐解いてみましょう。

認知心理学って何だろう?

認知心理学は歴史解説編にもあるように、トールマンが認知地図を作成した時から始まり、1950年代から1960年代に掛けて、コンピュータによる情報処理の発展とともに隆盛してきました。認知とは、大辞林で「cognition:知識を得る働き、すなわち知覚・記憶・推論・問題解決などの知的活動を総称する。」とあり、それらの機能がどの様に働いているかを研究する心理学を認知心理学と呼びます。では、どうしてコンピュータの発展とともに隆盛したかを説明しましょう。

コンピューターと人間の記憶

コンピューターとそれを人と対比すると、とても似ていることに気付くでしょう。例えば、ソフトウェアの仕様書を見た時、それをどう読み、理解し、記憶し、プログラムを組み、動かすかという事を考えると、全てが入力、出力、処理、記憶というコンピュータと同じような流れになっています。その時、「どう読むか」「どう理解するか」「どう記憶するか」「どう書くか」という事は、人によって違い、単にセンサーとしての耳、目などの働きだけではなく、過去の経験という外的要因、価値観や感情、期待、興味という内的要因が影響します(この考え方は、ブルーナー、グッドマン、ポストマンに代表されるニュールック心理学といいます)。コンピュータは、次のような構成要素からなります。

  • 五感(目、舌、鼻、皮膚、耳=視覚、味覚、嗅覚、触覚、聴覚) →キーボード、マウス、スキャナ、センサー等の入力装置
  • 口で話す、手で書く、目で話す)、ため息をつく→ディスプレイ、プリンタ、プロッタなどの出力装置
  • 脳で考える、判断する→CPU処理装置
  • 脳で記憶する→メモリ、ディスクなどの記憶装置

認知心理学概要

例えば、目の前にドアがあるとします。

  • ドア1:回すノブがあり、放射線のシールが張られている。
  • ドア2:四角い取ってが付いていて、綺麗な紙が貼られ、横にずれる。
  • ドア3:鉄で出来ており、引っ張るための取ってがついている。
  • ドア4:硝子で出来ており、取っ手が無く、ステーキと書いている。

大人であれば、それが何のドアか理解出来ますが、赤ん坊や幼児には、分からないドアもあるはずです。また、そのドアを開けて入りたいと思うか、入りたく無いと思うか、という違いもあります。これは、大人が過去の経験と、価値観から「ドア」を見て理解したために、次にどうするかという行動も変わってくるのです。例えば、病院でレントゲンを撮ろうとした時は放射線のドアを開けますが、原子力発電所の放射線のドアは開けませんよね。又、知覚は処理システムではなく、情報を入力(受容)するシステムであって、その受容(アフォード)のシステムが人と環境の知覚の枠組みと考えるという生体学的心理学(アフォーダンス理論に代表される)として研究されました。

認知心理学の処理システム

記憶には様々なセンサー(温度、湿度、震度、光度、電圧、気圧、硬度・・・)があり、部屋の状況(=生態学的な環境)を観測しているとき、その部屋に有る物から様々な情報が供給(アフォード)されていることになります。ところが、人も同じ様な五感(センサー)をもっているのに、常に電圧(びりびりっとくるかどうか?)を感じるなんてことはありませんよね。これが、受容システムが異なるという事で、その違いにより、どの様な行動に移すかという処理も変わってきます。例えば、太っている人は、同じ室温でも「暑い」といったりしませんか?これなんて、受容システムも違い、処理システムも違うのでしょうね?

認知

上で説明した事が「認知」という事です。これは、外部から与えられた刺激(S:Shock)と、生体内部に現れる反応(R:Responce)をつなぐ媒体過程としての、生体有機体(O:organism)=人間の中で何が起きているかを考えるという「新行動主義」が発展したものです。

記憶と認知

では、ここで「記憶」という事をもう少し考えてみましょう。記憶は、次の3段階で処理されます。

  • (1)符号化(記銘):外部の刺激が持つ情報を変換して記憶として取り込む。入力装置(キーボート、マウス、センサー)
  • (2)貯蔵(保持):符号化された情報を保存する。記憶装置(メモリ、ディスク)
  • (3)検索(想起):保存された情報を外に出す。処置装置、出力装置

記憶力大会とは?

現在、様々な分野の大会が開催されています。では、記憶力大会とは?どんな大会でしょうか。記憶力大会とは、イギリス発祥の競技会です。3日間で10種目の競技を行い、記憶力の世界一を競います。世界規模ではなく、気軽に参加できる記憶力大会とは?日本では2005年から毎年2月に行われており、奈良県で開催されています。競技の部、自慢の部、記憶力日本選手大会の3つの部門からなり、1日で5種目の競技を行い、記憶力の日本一を競います。日本選手権大会は、10桁の数字やトランプ並べ替えといった難しい内容で、12歳以上から参加できます。競技の部や自慢の部は、間違え探しや記憶力自慢といった内容で、こちらも自由に参加できます。小さいお子様も楽しめるように、小学1年から3年のクラスと小学4年以上のクラスに分かれます。会場には限定のお弁当も販売されており、家族連れでも楽しめる大会です。日本で行われる記憶力大会とは?本格的な記憶力保持者と同じ空気に触れ、家族連れで楽しめる大会です。

理解か暗記か

世の中には丸暗記という言葉があります。確かに、意味を何も理解しないで丸暗記だけで試験を通ってしまう人もいます。たとえ理数科目でもそれは出来ます。しかし、理解していない知識を丸暗記することは、時間の浪費です。特に、資格試験などで仕事に使う知識なら理解していないと使えないでしょう。もっとも試験対策上も丸暗記は不都合なのです。知識を問うだけとか、簡単な計算問題の解き方を暗記することはできるでしょう。しかし、論述試験や高いレベルでの応用問題のとき、意味を理解していないと理論矛盾を犯していても、それに気づかないのです。暗記している知識を書いているので本人は充分書けたと思っていても、知識的に部分点はもらえても、全体としては理論矛盾で間違っているので正解という評価は受けません。暗記か理解かという問題自体が意味がなく、理解も暗記もどちらもしなくてはならないのです。