機械暗記

機械暗記

あなたは自分のことを記憶力が悪いと思っていませんか?「暗記がちょっと苦手…」という方は、それを記憶力と結びつけて考えがちです。でも、人間の生まれつきの記憶力にはそれほど差はありません。誰でも幼児期は記憶の天才です。誰も文法を教えないのに正しい日本語を身につけ、自然にしゃべれるようになります。掛け算九九だって、ほとんど意味のない呪文のようなものにもかかわらず、しっかり覚えています。では、なぜ教科書や参考書などの暗記能力に差がつくのでしょうか?実は、中学に入る頃から、幼児期に発揮した機械的な単純記憶力は衰えていきます。意味もわからず何でも覚えられる時代は長くは続かないのです。その代わりに理解力が発達して、衰えた単純記憶力をカバーするようになります。理解できないことや無意味なことを覚えるのは、歳とともに難しくなります。何のつながりもない数字やアルファベットの羅列は、意味のある単語を覚えるのに比べて数倍、いや数十倍も努力が必要なはずです。人間の脳は、意味のないことはすぐに忘れるように設計されているのです。 

機械記憶の特徴

  • (1)人間の単純記憶力にはたいした違いはない。
  • (2)人間の脳は忘れるように設計されている。
  • (3)理解力が記憶を助ける。
  • (4)関心を強く持つと、記憶力・暗記力も強くなる。
  • (5)大好きなことには集中でき、努力を喜びと感じる脳の働きがある。

記憶の3段階

―覚えるとは?あなたは記憶に自信がありますか? たいていの方は「覚えることが苦手」「記憶力に自信がない」と思っているのではないでしょうか。自分のことを「記憶力がいい」などと公言している人はめったにお目にかかりません。

機械暗記とは?

機械暗記とは、教科書やノートに書かれていること、および教師の言説を無批判に知識として記憶することを指します。中学校・高等学校の定期試験での、「空欄に適語を入れよ」がこれに当たります。正解は授業で述べられたことのみであり、それ以外の回答は全て不正解となります。機械暗記が中心の中学校・高等学校においては、これが得意なものが高得点および高偏差値を得、有名高校・大学に進学することになります。しかし、大学の講義は、学生が主体的に学習するためのヒントに過ぎないため、機械暗記に依存して大学に進学した者は、大学の講義で脱落する可能性があります。

暗記と記憶力

私も中学・高校時代、暗記に関しては苦手意識がありました。特に歴史や地理、生物、化学などの分野では覚えるのに苦労しました。ところで、ひと言で「記憶力が弱い」といいますが、覚えられないのか、忘れっぽいのか、その違いを考えたことがありますか?私の場合は、ちょっと長い言葉などを見たり聞いたりして、直後に復唱するのが幼い頃から苦手でした。今風の言い方をすれば、脳のワーキングメモリー機能がちょっと弱いのかもしれません。そのため、まとまったことを覚えることも苦手だったのです。でも、一度しっかり覚えたことは比較的忘れないほうだったかもしれません。若い頃には今と違って、ど忘れすることもあまりありませんでした。

記憶には3段階がある

すでにお気づきの方も多いと思いますが、記憶には「覚える」という作業と「思い出す」という作業があり、その間に「覚えている」という脳の状態があります。言われてみれば当たり前のこの現象を、心理学では順番に、

  • (1)記銘
  • (2)保持
  • (3)想起

といいます。急に難しそうな雰囲気になりましたが、「分類して名前をつけた」にすぎません。要するに、(1)物事を頭に入力する段階と、それを(2)脳に保存して記憶を保つ段階、さらに(3)必要なときに思い出すという段階を区別しましょう、というだけのことです。だれでも経験する「ど忘れ」という現象は、第3段階で「いつもはできることが一時的にできなくなった」ということです。また、すっかり忘れていた昔のことを、あることがきっかけで突然思い出すというようなことがありますが、これも厳密には忘れていたのではなく、「長い間取り出すことのなかった記憶を、脳のファイルから見つけて取り出すことができた」ということです。なお、脳生理学(脳科学)でも記憶を3段階に分けており、次のような用語を使っていますが、意味はまったく同じです。

  • (1)獲得(頭に入れる=記銘)
  • (2)固定(保持する=保持)
  • (3)再生(取り出す=想起)

心理学がどちらかといえば文学的なのに対して、生理学には機械的なムードが漂っていますね。肉体と精神を別個のものと考えて、人体を物質と見る西洋合理主義の認識は、上の用語にも現れていて、私は心理学用語のほうが好きです。

優れた記憶法は、思い出すきっかけをうまく仕込む

それはともかく、記憶では覚えることよりも思い出せることのほうが大切です。一時的に思い出せなくても、何らかのきっかけがあれば記憶は甦りますから、覚えるときにそのきっかけとなるものを仕込むことができれば、暗記はいっそう確かなものになるでしょう。関連するものがわかっている場合は、思い出すのは容易ですし、出だしの文字が1字わかっただけでもそれが大きなヒントになって、思い出すことが多いものです。様々な記憶法はそうした記憶の「再生=想起」の仕組を利用しているものがほとんどです。

記憶力のカギを握るのは好奇心と集中力

理解力は、関連する知識が多いかどうかで、同じ人でも良くも悪くもなります。でも、それだけではありません。どれだけ「覚えようという意識」を持って集中しているかも、理解力を大きく左右します。では、集中力はどこから生まれるのでしょうか?いちばんのポイントは、「その話題(内容)にどれだけ関心を強く持っているか」ということです。興味のないことには集中できませんから、頭が働かなくなります。逆に、知的好奇心を強く持てば集中力が発揮できますから、理解力と記憶力をグ~ンと高めることができます。勉強が苦手な人でも、大好きな歌手やタレント、あるいはゲームやアニメのキャラクターの名前や特徴はすぐに覚えてしまいますね。でも興味のないものは何度見ても覚えられません。学校の勉強が覚えられないのは、記憶力が弱いからではなく、興味の度合いが弱いため集中できないからです。

記憶と集中力

集中力とは凸レンズのようなものです。太陽の光を凸レンズで集めると、焦点に当たるところが燃え出しますね。その焦点が好奇心の対象となるものです。誰でも、心に凸レンズという集中力を持っています。その集中力が発揮できるのは好奇心を焦点に集めたときです。どんなことにも好奇心が持てる人は、努力しなくても対象に集中力が向きます。だから、物事の仕組や社会の仕組、歴史、地理など様々なことに知的好奇心を持つことができれば、理解力がフル回転し、一つ一つの言葉が脳に強く焼き付けられるでしょう。

暗記能力と記憶能力まとめ

暗記能力は記憶力の差というより、理解力や知的好奇心、集中力の差だということが納得できたでしょうか。確かに、好奇心というものは心の奥底の問題だから、自分で自由にコントロールできるとは限りません。「興味がないんだから、しょうがないじゃない」といわれてしまえば、それまでです。