睡眠学習

睡眠学習

睡眠学習とは、眠っている間を利用して、記憶学習をすることです。疑似科学としての睡眠学習は昔からありましたが、実際の脳科学においては、ようやくその効果が解明されだした段階といえそうです。もしこれができれば、こんなに楽なことはないですよね?眠っている時間がもったいないとか、その時間を利用して勉強したい!というかたには、もってこいの受験勉強法です。問題は、それが本当に有効なのか?ということです。

睡眠と睡眠学習

睡眠中は、レムであれノンレムであれ、両方の時間帯で記憶を整理しているといわれています。今までは夢を見ているレム睡眠のときに、記憶を整理しているといわれてきました。しかし脳の働きが低下しているノンレム睡眠のときも、記憶の整理に大きく関係していることが分かっています。睡眠学習がノンレム睡眠時にしか有効ではなく、しかも「理解学習」には適さずに「記憶学習」限定なのにくらべると、寝る前の学習は、とても可能性に満ちているわけですね。寝る前に教科書を理解しながら勉強すれば、そのあとの睡眠で記憶に定着しやすくなります。以上のように、睡眠学習機にとくにこだわらなくても、夜寝る前に勉強をする・・・この方法だけで睡眠学習以上の効果が期待できるわけですね。なお、早朝や昼間、晩に勉強しているというかたは、寝る前に、その日学んだことを軽くでもいいので「復習」すると、記憶の減退や干渉を抑え、睡眠中に効率よく記憶を定着させることができます。

睡眠学習と枕

枕に、カセットテープのデッキが埋め込まれているだけの単純な構造になっている睡眠学習機は、かなり昔から雑誌の広告をにぎわせていました。音楽CDでBGMも流したり・・・。ところが、この睡眠学習器、じつは科学的根拠がないのをご存じでしたか?脳科学者は、眠っている間に学習する効果を認めていません。日中、学習しているときに「バラの香り」を嗅がせ、それを睡眠中に嗅がせると、記憶の定着率がアップするということは分かっていますが・・・。

睡眠学習と0ドーパミン

睡眠中に学習するとなると、寝ている間にドーパミンを出さなければなりません。そうなると脳が冴えてきて、眠りを妨げる危険性があると考えられてきました。ところがドーパミンが眠りを抑制する回路と、記憶が形成される回路は別のものということが判明したそうです。睡眠を抑制することなく、記憶形成にかかわるドーパミン神経の活性化に成功したわけです。でも最近になって、熊本大学発生医学研究所が睡眠学習の可能性を発表しましたね。神経伝達物質のドーパミンは、記憶学習のさいに分泌されますが、同時に睡眠を抑制する(妨げる)効果があります。受験勉強で夜中まで頑張っていると、そのあと興奮して寝付きづらいのは、脳内にドーパミンが多量に分泌されているからです。

睡眠学習の研究

研究者の1人、j・リバー(J.Reber)氏がスミソニアンに行った説明によると、この研究の大きな違いは、既に学習したことの強化が行われるという点です。新しいことを睡眠中に学ぶわけではありません。直前に学んだ事柄を繰り返すことで、既に脳にある情報の定着率をあげるのです。睡眠中に、起きている間の情報が処理され、記憶の定着が行われるというのはよく知られていることです。しかし、もっと有効に寝ている時間を活用できるかもしれません。今回、脳科学者のチームが行った発表によると、「人間は寝ている間も学習し続ける事ができる」そうです。

睡眠学習のアイディア

寝ている間に勝手に勉強する「睡眠学習」というアイディア。そんなんで覚えられたら苦労しないよ!とは思いながらも、ずっと夢みていました。研究内容が気になります。実験を行ったのはノースウェスタン大学の研究チーム。集められた被験者達は2曲の曲の弾き方を覚えます。その後、暗い快適な部屋に移って、90分の睡眠を摂ります。その部屋では、さっき覚えた曲の内、1曲だけが繰り返し流れています。起きてから覚えた2曲を弾こうとすると、睡眠中に聞いていた曲の方がよく思い出すことができました。この実験に関する論文は、Nature Neuroscienceで読むことができます。なるほど。しかしそう言われても、英語学習教材を流しながら寝ても効果なかったという経験がある私には、何となくピンときません。

睡眠中の記憶

現在の所、寝ている間に脳で何が起きているかは、ぼんやりとしか分かっていません。脳が記憶を定着させるプロセスも分かっていません。しかし今回の結果により、少なくともそのプロセスを強化する方法が分かりました。当然ながら睡眠中に聴覚による刺激以外で、学習効果を高めることはできません。睡眠中も学習するためには、昼間の経験を音声データで表す必要があります。音楽を学ぶならそんなに難しくありません。語学や会話を学びたいなら、音声教材を使うといいかもしれません。技術的な事だったらポッドキャストなどが解決策を提示してくれそうです。どのようなテーマであれ重要なのは、睡眠学習では「起きている時に学習したことを強化すること」しかできないということです。

睡眠時間と記憶

アメリカ人の平均睡眠時間は7.6時間、生涯でおよそ20万時間寝ていることになります。(注 日本人の平均睡眠時間は7.4時間程度。)この時間を学習効果の向上に使ったら人類は新たな境地に立てるかもしれません。

睡眠学習の活躍

もし睡眠学習を活用するなら、「英語の単語と意味」とか、熟語、連語、構文とか、単純な「知識記憶」にしたほうがいいです。丸暗記できるような事項ですね。歴史で言えば、日本史や世界史のテキストを吹き込むのではなく、「年号と事件名」などを吹き込むわけです。すべてを睡眠学習に頼れるなら楽でしょうが、やはり、そんなうまい話は存在しないということですね。起きているときに明瞭になっている「顕在意識」は、睡眠中はお休みしています。そのかわり「潜在意識」が前面に出てきています。

睡眠学習と睡眠

睡眠といっても、大きく2つに分けられます。レムとノンレムですね。深い眠りであるノンレム睡眠のときは、周囲の物音や光を多少、感知できる状態にあります。また寝返りをうったりして、体が動くのも、このノンレム睡眠のときです。一方、レム睡眠は浅い眠りといわれており、夢を見ている段階です。このとき感覚系(視覚や聴覚、触覚など)からの脳への入力はストップしています。また脳から筋肉への指令も遮断されています。この状態によって、物音がしても気づきませんし、電気がついても気づかないわけです。また夢を見ても、体が反応しないようになっています。以上の2つの睡眠状態を比べると、睡眠学習ができるのは、周囲の音が聞こえるノンレム睡眠時だと考えられます。睡眠の比率でいえば、ノンレムのほうが多いので問題ないかと思います。人は眠りに入ると、まず深いノンレム睡眠に入っていきます。そして2つの眠りを交互に繰り返しながら、明け方に近づくほど、ノンレム睡眠は浅く短くなっていきます。その点から考えると、寝初めの90分間のノンレム睡眠時に、音声を聴くと効果的なような気がします。一晩中、音を流し続けても、潜在的に脳が疲れてしまう可能性があるので、「寝初めの90分間だけ音声を聴く」のが無難です。