エピソード記憶と
過誤記憶

エピソード記憶

嬉しいことや楽しいこと、悲しいことや辛いことなどの記憶は、なかなか忘れない物です。その一方、テストのために頭に詰め込んだ知識などは、しばらく経つと、いつの間にか消えて無くなっていませんか?実は記憶には『エピソード記憶』と『意味記憶』の二種類があるのです。エピソード記憶というのは、体験したこと『思い出』です。意味記憶というのは、本を読んだりして得た、いわゆる『知識』のことです。思い出は深く記憶に残るのですが、知識は繰り返し使っていないとバンバン忘れていってしまいます。覚えたことを忘れないようにするために、エピソード記憶を勉強に応用するようにすると効果的です。具体的には、ただ無味乾燥した知識として覚えるのではなく、ストーリーを作って覚えるようにするのです。具体的な記憶、暗記法をまとめてみました。

エピソード記憶の概要

感動して読んだ小説の内容などは忘れにくくありませんか?それは喜怒哀楽を伴った1つのエピソードだからです。これを応用して、め歴史学習などで重要場面をエピソード化して覚えるようにすると、内容がよりよく記憶されるようになります。『1192年、源頼朝が鎌倉幕府を作った』などと、単なる情報として覚えようとするより、源頼朝が弟の義経と共に、苦労の末、平家を破ったんだというストーリーとして覚えると、記憶に定着されやすいのですね。

エピソード記憶
幼い頃にあったことなどの記憶は、心理学ではエピソード記憶と呼ばれているもので、タルヴィングという心理学者が1972年に提唱しました。エピソード記憶は人生の個人的な経験の記憶のことをいい、次に述べる意味記憶と対をなす対立的な概念です。特に覚えておこうと意識しなくても、自然に覚えているのがこの記憶の特徴です。なお、エピソード記憶は記憶の中でもいちばん高度な働きを持ち、忘れにくいという特徴があります。ほとんどの人が3・4歳くらいまでの体験を覚えていないのは、エピソード記憶が生まれたときから備わっていた能力ではなく、あとから獲得された能力だからだとされています。
意味記憶
解説の順番が逆になったようですが、エピソード記憶の分類が発表される数年前の1962年に、心理学者のキリアンという人が意味記憶という概念を提唱しました。意味記憶はひと言でいえば知識の記憶です。生まれて最初に覚える母国語も意味記憶です。言葉を覚えると様々な知識を吸収します。さらに学校に行って教科の勉強をします。こうして得た知識が意味記憶です。意味記憶は「覚えようと意識して覚える知識」であり、体験ではなく学習によって得られる記憶のことです。その意味では抽象的な記憶ともいえます。通常、「記憶力」という場合は、意味記憶の能力を指すことが多いようです。大の大人が少年少女時代の体験をこと細かに覚えていても、「記憶力がいいね」とほめられることはめったにないでしょう。
知識と体験の融合
意味記憶とエピソード記憶はまったく別の記憶の部類に属しますが、接点がないわけではありません。たとえば、理科の実験などは実際に体験するものですから、そのときの映像や感情が脳に深く刻まれます。意味記憶(知識)とエピソード記憶(体験)の融合による相乗効果が期待できるわけですね。学校時代は意味記憶が偏重されますが、社会に出るとエピソード記憶も重要で、どちらが足りなくても仕事上のハンデになるでしょう。そのことは昔からわかっていて、「あいつはいい大学を出ているかもしれないが、頭でっかちで使い物にならない」などと、会社のエラい人が時々こぼしたくなるのは、いつの時代も変わりません。

エピソード記憶あれこれ

逆エピソード記憶は常にエピソード記憶として思い出されるとする見方もあります。もちろん、エピソード記憶は意味記憶に影響を与え、意味記憶の上に成り立っている。エピソード記憶が最終的に意味記憶へと変化するとは考えない点が上述の考え方とは異なります。研究者によっては、エピソード記憶は常に意味記憶に洗練(精製)されていると考えています。その場合、特定のイベントについてのエピソード的情報は一般化され、イベント的詳細は失われます。この考え方の派生として、繰り返し思い出されるエピソード記憶は一種のモノローグとして記憶されるという見方があります。例えば、あなたがある出来事について繰り返し話をした場合、それは既にあなたにとっては「イベント」ではなくなり、あたかも物語を語っているように感じていることに気づくでしょう。

エピソード記憶の研究

エピソード記憶に関して活性化する脳の領域(特に海馬)の研究によると、若者と高齢者で違いがあることが観測されたMaguire and Frith 2003。高齢者は左右の海馬が活性化するのに対して、若者は左の海馬だけが活性化する傾向があります。

過誤記憶

マウスの記憶を操作し、実際の出来事とは違う誤りの記憶、いわつる「過誤記憶」を人為的に作り出すことに、理化学研究所脳科学総合研究センターの利根川進センター長らのグループが成功したそうです。グループはマウスを遺伝子操作し、記憶をつかさどる脳の神経細胞に光をあてると記憶を思い出すようにしました。まず、そのマウスを箱に入れて、安全な環境だと記憶させました。次に別の箱に入れ、脳の神経細胞に光をあてて安全な環境を思い出させながら電気刺激を与えて不快な気持ちにさせ、再び元の箱に入れると、安全な環境に戻したにもかかわらず、マウスは恐怖を感じる反応を示したそうです。今回の実験で、グループは、安全な環境にいた状態と恐怖の体験が結びつき、記憶が実際の出来事とは違う状態で再構成される「過誤記憶」が形作られることを確認したことになると説明しています。 これは興味深い発見ですが、同時に恐ろしい結果になることも予想されますね。

過誤記憶の研究結果

人為的に過去の記憶を操作できるということは、犯罪事実に関する証人の記憶を変えて有罪または無罪を勝ち取るということも可能になります。また、国民の過去の記憶を操作して政府や権力者に都合の良い記憶に作り変えることも可能になるわけです。もっとも、ここまで想像を膨らませると小説、映画の世界になりますが。事実は小説よりも奇なり。科学の進歩は凄いですね。今回の発見が良い目的に利用されることを願っています。